【PM】フィリップモリスと【MO】アルトリアの合併協議は終了して合併は無くなりました。タバコ銘柄の未来も終了したことになるのでしょうか?
報道によると合併協議終了の理由としては今後両者によって、米国におけるiQOSの立ち上げに注力していくという事。
この報道を受けて、連続増配50年の配当王で高配当8%のタバコ銘柄【MO】アルトリアは時間外+3%から最終的には-0.4%、それに対して【PM】フィリップモリスは時間外+6%から最終的に+5.2%。と両者で大きな差が出ました。
実はこれは当然だと思います。合併はそもそもアルトリアには売上成長の起死回生、フィリップモリスは好調な経営をブーストさせるだけと意味合いが違ったからです。
また表沙汰になっている理由以外にも合併交渉が終了したのは他の理由もあるんじゃないかと推測しています。 そもそも両者にとってこの合併の思惑はどこにあったのかその点を再度振返って、今後の2社の展開を予想したいと思います。
ではもみあげ米国株投資家の「フィリップモリスと配当王アルトリア合併協議終了 タバコ銘柄の未来も終了か?」
*投資判断はあくまで自己責任で
フィリップモリスとアルトリアの合併協議
まずは再度フィリップモリスとアルトリア合併協議の意味のおさらいです。
ポジティブポイント)
・キャッシュフローが潤沢になり全世界のマーケットの選択と集中が可能になる。
・iQOSの販路拡大、またJuluも全世界に販売することができれば、更にE-cigarettesの全世界におけるシェア率を拡大可能。全体の売上を上げることも可能になる。
・投資家にとってキャッシュフローが潤沢になれば、更に長期的な増配が期待できる。
ネガティブポイント)
・元々訴訟リスクを懸念して、米国内をアルトリア、それ以外の国をフィリップモリスとスピンオフしたので、再合併は訴訟リスクを増加させることになる。
・今までフィリップモリスはFDAの影響を大きく受けなかったが、アルトリアと合併することによってFDAの影響が大きくなる。またFDAが新たに規制強化する可能性も高くなるか?
jp.wsj.com
合併協議終了理由
もみあげは今回の交渉終了理由で最も大きかったのは、実はアルトリアとフィリップモリスが合併して米国内における売り上げが最大になれば、FDAにとってもまたアメリカ国民にとってもイメージ戦略的にネガティブな事しかないと判断したのでは?と予想しています。
下記の記事の中でも述べられていたのですが、実はフィリップモリスは米国内の認知度76%、たいしてアルトリアは24%。もし両者が合併して更に認知度が高まってしまえば、タバコ嫌悪活動によっての逆風が強くなるしか考えられませんよね。
訴訟リスクは間違いなく今までとは比較にはならなくなった可能性もありますよね。米国の今までのタバコ被害の訴訟額は2000億ドル(20兆円)です。
もちろんアルトリアのJUULが電子タバコ、フィリップモリスのiQOSが加熱式タバコなので競合になりシェアの奪い合いになる事も大きな要因であったとも考えられます。
合併交渉は財務面の理由が大きかった
今回の合併協議終了によって財務面においてフィリップモリスはサポートが期待できなくなりました。ではなぜそもそも財務面が大事だったのでしょうか。一度この部分もおさらいしておきます。
EPS&配当性向&営業利益&CF
【MO】アルトリア
配当率 8.25% EPS3.68 配当性向71% 営業利益 37.4%
営業CF 9478 Free CF 8042
【PM】フィリップモリス
配当率 6.54% EPS5.08 配当性向88% 営業利益 38.3%
営業CF 8391 Free CF 8153
これだけを見ると配当性向はアルトリアが余裕がまだある、Free CFがアルトリアとフィリップモリスが同じ位かなだと思います。
営業キャッシュフロー成長%
これを見たら何故フィリップモリスがアルトリアと合併してもよかったのかわかると思います。アルトリアのキャッシュフロー成長%が異常に高いのがわかるかと。
アルトリアの営業キャッシュフローの伸び率が異常に高いんです。何と2018年は70%も上昇しています。要するにアルトリアはお金が余っているんです。それを成長投資に使いたい。対してフィリップモリスは9%だけ、これは新興国への投資などを進めている為、投資キャッシュフローが大きい事が分かります。
Cash Conversion Cycle(CCC)
売掛金をすばやく回収できて、買掛金をそのまま放置できる企業。つまりその企業の権力具合を見れる指標になります。この指標に最近注目しているのですが、マイナスになればなるほどいいです。例えばPGやMCDなどはこのCCCがマイナスです。小売には特に重要な指標ですね。
CCCもアルトリアがフィリップモリスより大きく上回っています。アルトリアはCCCに対してフィリップモリスより5倍も強い!という事になります。米国内だけの販売のアルトリアだからこそなのでしょうが、これも財務余力に大きく影響しますよね。
Long Term debt
長期債務になります。これは当然数値が低ければ低いほどいいです。こちらもアルトリアは長期債務を減少させてるのに対して、フィリップモリスは減少させれていません。
売上を成長させて、海外展開を進めれば進めるほど債務も増えてしまうので、フィリップモリスとしては仕方ないとはいえます。
財務理由まとめ
今回は、各数値に対して更に踏み込んでみました。フィリップモリスの決算や米国の規制状況をみると、合併がそもそもフィリップモリスには訴訟リスクが増えるだけでメリットがないように見えました。
但しアルトリアの財務が圧倒的に優れていて、フィリップモリスとしてはその余剰資金を更に成長分野に追加投資したかった事がわかると思います。
アルトリアもフリーキャッシュフローに余力があり過ぎる為に、内部留保益が溜まっています。それを何とか米国以外の成長市場に投資したいという思惑もあったかと。
フィリップモリス今後の予想
【MO】アルトリアと【PM】は今後米国内においてのiQOSの立ち上げに注力していくことで協議がまとまったという事です。iQOSは既にFDAによって販売承認がおりて、現在販売に向けてプロセスを進めてる最中です。
元々フィリップモリスは前回の決算でも好成績で、株価的には上昇する余地があったのですが、今回の合併交渉で株価が停滞していました。
Q2決算内容はEPSが15%伸びに修正。更に通常の紙巻きタバコ出荷量は4%近くダウンしているが、加熱式タバコiQOSの出荷量が37%アップという状況でした。
フィリップモリスは財務的なメリットを得ることはできなくなりましたが、アジア・アフリカを中心に高利益率のiQOSを中心とした加熱式タバコの売上拡大に継続して注力するでしょう。但し、世界1位の3億人マーケットである中国、1億人インドは参入障壁が高そうです。
ブラジル、タイ、韓国もE-cigaretteに対して禁止や警告がされている状況です。JUULを利用しての販売拡大よりは、自社製品である加熱式タバコiQOSの無煙式タバコを開発して、販売を拡大した方がメリットがあると判断したとも思えます。
アルトリア今後の予想
アルトリアはiQOSの販売権をフィリップモリスから任される事になるので、電子タバコJUULの規制が厳しくなっている米国において何としてもiQOSの販売を軌道に乗せるための、ロビー活動や販促活動に余剰資金を回すことになると思います。
また本日のニュースにおいてJUULのCEOがアルトリアの最高戦略・成長責任者に交代したという事も報道されています。
Altria, Philip Morris End Merger Talks; Altria Executive Named New CEO of Juul
10:28 AM ET, 09/25/2019 - MT Newswires
JUULとiQOSは元々電子タバコと加熱式タバコなので競合する商品になります。またJUULの若年層への健康被害が非常に問題視されてきていたので、アルトリアがiQOSの販売に競合しないようにJUULを完全に立て直して、規制面への対応も強化するといった強い意志表示になると考えます。
またアルトリアは合併交渉決裂に伴って、通年EPSの下限ガイダンスを引き上げています。財務に余裕があるから当然かもしれません。配当は心配しなくて良さそうですね。
$4.15 to $4.27→$4.19 to $4.27
まとめ
いかがだったでしょうか。今回はフィリップモリスと配当王アルトリア合併協議終了 タバコ銘柄の未来も終了か?を記事にしました。
全世界的にタバコという依存性が高くまた健康被害が大きいといわれる嗜好品への逆風が大きくなっているのはまちがいありません。フィリップモリスとアルトリアの2社は「煙の無い未来という共通の関心」という言葉でイメージアップ戦略を今後は強化してきそうです。
元々決算も好調だった【PM】フィリップモリスはしばらく株価は上昇するかもしれません。 【MO】アルトリアはタバコの米国内の落ち込みが今年度は5%から6%になるといってますが、財務的には配当は余力がありそうですが株価は停滞しそうです。
近い将来この2社が配当が無くなることはなさそうですが、特にアルトリアは米国内の売上拡大を実現しないと厳しくなってくるのは目に見えてるので今後もウォッチしていきます。
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